2017-09

HOSONO HOUSE/細野晴臣 - 1973.05.25 Fri









[sales data]
1973年5月25日
[producer]
細野晴臣
[member]
細野晴臣(vo/b/g/etc)
松任谷正隆(p/etc)
鈴木茂(g)
林立夫(ds)
駒沢裕城(steel g)




個人的にYMOメンバーで特に興味があったのは細野さんでした。
もっさりした表情でボソボソ話すホンワカした人柄と音楽が妙に一致していて、
一時その憧れからベースを購入したこともありましたが全く扱えずすぐ友人に転売しました(苦笑)

本作は事実上はっぴいえんど解散後に埼玉県狭山市のアメリカ村にあった細野さんの自宅で
制作されたソロ1st(録音期間:1973/2/15~3/16)
エンジニアの吉野金次氏のよると
「基本的にザ・バンドのミュージック・フロム・ザ・ビッグピンクの雰囲気を狙ってたんですよ」
6畳の部屋にスタジオとコントロール・ルームを設置し、何人ものミュージシャンやスタッフが
泊まりがけでレコーディングをし、食事も細野さんの奥さん一人が炊き出しの様相で
まるでキャンプのようなレコーディングだったそうです。
キャラメル・ママとしての初めての録音でもあるのですが、まだこの頃はそのバンドのネーミングが
ついてなかったようです。

まだほんのりとはっぴいえんどの残り香もあり、細野晴臣という人柄がそのまま
アルバムに詰め込まれている好歌アルバムですが、制作時はかなり悩みも多かったようです。
ラストアルバムとなったHAPPYENDの海外録音の時にリトル・フィートのレコーディングを見たり、
ヴァン・ダイク・パークスの音作りの現場を体験した衝撃の影響がジワジワ大きくなるも
それらを自分の中で整理できないまま、初のソロアルバム制作に何をどうしていいかわからず
かなりてんぱっていたようです(精神的にもかなり不安定だったようです)

細野談
「当時の僕は終末感にさいなまれ、その上、ある精神的なショックのフラッシュ・バックもあって
身も心もズタズタに分裂してしまうような状態に落ち込んでいた。」

この状況を脱する契機になったのがヴァン・ダイクの「ディスカバー・アメリカ」だったそうで
このアルバムを徹底的に聞き込んでいくうちに感覚が過去に戻っていったそうです。



細野談
「ロック・ビートがイヤになったんだよ。アメリカの歴史を遡って、例えば子供の頃に聞いた
ハリウッドの映画音楽とか、そういうノスタルジックな世界を思い出したんだね。
1920年代のポピュラーと民族音楽。
昔から聴いてたけど、特に熱中し始めたのはこのレコーディングの途中から。
それと同時に、精神的な不安定さからジェイムス・テイラーとかああいうシンガー・ソングライターの
暖かい音楽に救いを求めていた。
そのおかげで狭山では、好きな音楽がいっぱい増えて、最初は点だったのが線に繋がった。
ただ楽しむんじゃなくて、ルーツを探っていく。深い勉強をしたおかげなんです。」


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トロピカル・ダンディ/細野晴臣 - 1975.06.25 Wed









[sales data]
1975年6月25日
[producer]
細野晴臣
[member]
細野晴臣(vo/b/etc)
松任谷正隆(p/hamond)
鈴木茂(g)
林立夫(ds/per)
佐藤博(p/clavinet)
浜口茂外也(per)
矢野誠(strings arrange)
伊藤銀次(g)
吉田美奈子(bvo)
久保田麻琴(bvo)
福島照之(tp)
駒沢裕城(steel g)
国吉征之(fl)
山下洋治(ukulele)
クレア・フランシス(voice)
伊集加代子(bvo)
南こうせつ(bvo)




ソロアルバムとしてはHOSONO HOUSE以来、約2年ぶりですが、
この間の細野さんはキャラメル・ママ~ティン・パン・アレイのメンバーとして
数多のレコーディングに参加し(参考:細野晴臣の歌謡曲
知らず知らず売れっ子セッションマンとして人脈を広げベルウッドから
クラウン・レコードに移籍。

今回のソロアルバムは今まで自分が経験してきたノスタルジックな音楽を
なんとかして自分の音楽に生かしたいと思い、
「僕の中では、チャイニーズな感じとカリプソとそのぐらいのアイデアしかなかったんだ」と
アイディアが煮詰まって悶々としていた時に
沖縄旅行帰りの久保田麻琴氏が細野さんの家に遊びにきて
「いったい何が好きなのか?どんなのを作るのか?」と質問され返事に窮していると
「細野さんはトロピカル好きでしょ。トロピカルが好きなら、トロピカルをやれよ。
細野さんはトロピカル・ダンディーだよ。」と言われ

細野談
「人にいわれてはじめて気がついて。そうか、好きなことをやればいいんだと思って(笑)
この言葉の持つイメージを自分の中にとりこむ事によって僕は救われたような気がしました。
理由も聞かずに、トロピカル・ダンディー、いいなと思って、アルバム・タイトルに
してしまいました」

ジャケット画はヤギヤスオ氏で最初、タイタニック号が沈む図柄にする構想もあったそうですが
細野氏がはっぴいえんど結成時に影響を受けていたプロコル・ハルムのソルティ・ドッグを
モチーフしたものになり、横にタイタニック号が描かれています。



余談ですが細野さんはタイタニック号の悲劇で生き残った日本人、細野財閥の末裔にあたります。
又細野氏がヤギ氏を久保田氏に紹介した縁で夕焼け楽団のアルバムジャケットも
ヤギ氏が手がけることになりました。)



会話は更に盛り上がり、久保田氏の沖縄みやげ

kina_20150402180236d18.jpg

まだ沖縄限定発売だった喜納昌吉さんのハイサイおじさんのシングルEPに
強い衝撃を受け面白い音楽は、全部ゴッタ煮(チャンプルー)なんだと意識した翌日、
田中唯士(S-KEN)氏に唐突に「細野さん、チャイニーズ・エレガンスはいいですね」と言われ
細野談
「あっ!それだっ!て(笑)。またもや。それで僕のなかで、トロピカルとチャイニーズと
エレガンスという言葉が、はじめてコンセプトになったんです」

そして重要キーワードからコンセプトが形になってきた細野氏はナチュラルハイな状態となり
追い討ちをかけるようにマーティン・デニーの音楽に出会い、
細野談
「麻薬みたいななんか恐ろしいものを打たれちゃった感じだったね。それを聞いたとたんに
トリップが始まっちゃった(笑)。
はっぴいえんどの頃から、居心地の悪い世の中だった。日本は好きだけど、音楽やってると、
そうはいかない。いつも文化の摩擦を感じる。あの頃、それを裏返してくれたのが
マーティン・デニーの音楽(エキゾチック・サウンド)だった。
ネガティブに見えていた日本のあれこれが違った風景に見えてくる、面白くなってしまう。
異邦人の目を初めて持てたんだ」



「トロピカル・ダンディ」~「泰安洋行」~「はらいそ」をトロピカル3部作と称しますが
細野さんの脳内でモヤモヤしていた不明瞭なアイディアを久保田さんと田中さんの
何気ない言葉が形を明確にしマーティン・デニーの音楽に出会い
「西洋から見た東洋」というコンセプトが開眼し
細野さんが「ソイ・ソース(=醤油)ミュージック」と名づけたサウンドがYMOにつながって行く
原点だったことを前知識に聴き直すと、このアルバムはとても恐ろしいコンセプトアルバム
だったことに身震いせずにはいられません(笑)

ハリー細野 クラウン・イヤーズ 1974-1977/細野晴臣 - 1976.05.08 Sat









[sales data]
2006年12月20日
[producer]
細野晴臣
[member]
細野晴臣(vo/b/etc)
鈴木茂(g)
林立夫(ds)
矢野顕子(pf)
坂本龍一(kbd)
田中章弘(b)
浜口茂外也(perc)
村岡健(sax)
羽鳥幸次(tp)
新井英治(tb)





細野晴臣さんのクラウン時代作品に驚きの未発表音源&映像を収録した秀逸BOX。
(当時を考証するための資料も大変充実しています)

Disk1:トロピカル・ダンディ(1975年)
Disk2:泰安洋行(1976年)
Disk3:ハリー細野&ティン・パン・アレイ in 中華街(1976/5/8)
Disk4:ハリー細野&ティン・パン・アレイ(1975-1976)

今回の目玉は未発表ボーナストラック等ありがちなものではなくファンの間では伝説の
「中華街ライヴ」やティン・パン・アレイの「ファースト&ラスト・コンサート・ツアー」など
レア映像収録で買い直しも止む無しの美味しい内容テンコ盛り。
(このBOXが発売された前後ヤフオクには細野さんのクラウン時代の作品が大量に
出品されていたので皆、買い換えたんでしょうね(笑)

映像特典の中華街ライヴとは細野さんの立案で、ヴァン・ダイク・パークスが
アメリカでカリビアン・レヴューみたいなコンベンションライヴをやったことを模倣して
中華街で無国籍な雰囲気でやりたいというのが発端となって実現したそうです。

長門芳郎(当時ティン・パン・アレイのマネージャー)談
「76年のティン・パン・アレーのレコード・リリース、プロモーションに関する年間計画
みたいなものがあって、鈴木茂のセカンド、細野さんのセカンド・アルバムをいつ出すとか。
3ヶ月おきぐらいでティン・パン関連の作品をリリースする予定があって、その流れの中で、
中華街でのディナー・ショー形式のコンヴェンション・ライヴのアイデアが生まれたんだ」

この映像は地方のフィルムコンサート用に収録したものだそうですが実際には
使われず、30年経って奇跡のお蔵出しとなったわけですが、興味深いのは
解釈が広がる音楽は映像がなかった頃の音楽の方が圧倒的に多いんですよね。
目で聴いてる音楽は目を閉じたらあっという間に泡となって消えてしまいますから・・・









泰安洋行/細野晴臣 - 1976.07.25 Sun









[sales data]
1976年7月25日
[producer]
細野晴臣
[member]
細野晴臣(vo/b/etc)
鈴木茂(g)
林立夫(ds/per)
矢野顕子(p)
浜口茂外也(per)
佐藤博(p/etc)
宿霧十軒(b)
岡田徹(per/acordion)
谷口邦夫(steel g)
岡崎弘(sax)
村岡建(sax)
砂原稜三(sax)
山下よた郎(船長さんの声)
大瀧詠一(bvo)
小坂忠(bvo)
大貫妙子(bvo)
久保田麻琴(bvo)
中根康旨(bvo)
市橋一宏(bvo)
川田琉球舞踊団(蝶々さんの声)




トロピカル3部作第2弾。
細野談
マーティン・デニーの影響は、このアルバムはかなり強いです」

アルバムタイトルはティン・パン・アレーの「ファースト&ラスト・コンサート・ツアー」で
訪れた長崎(1975年4月11日)にあった雑貨店の名前だそうです。

taianyoko.jpg

前作の「ソイ・ソース・ミュージック」を発展させた「チャンキー・ミュージック」
(ニューオリンズに惹かれていた細野さんが、その地の「ごった煮料理ガンボ」に
相当するものとしてチャンコ鍋を思いつき、それに「ファンキー」をかけたもの(笑)

このアルバムを作る頃はトロピカル・ダンディーを制作していた時のナチュラル・ハイな
状態から徐々に下降線を辿っていて、地上スレスレになった時に飛んでいた当時のことを
思い出してイメージをまとめたそうです。

細野さんの声質って間違ってもボーカリストのそれではないのですが、
ブライアン・イーノ同様何とも表現できない味わいがあるのです。
ご自身は最新テクノロジーを駆使したアンビエントにご執心ですが細野さんの声そのものが
アンビエント(偏狭音楽)な魅力に満ち溢れているんですよね(笑)

今でこそワールドミュージックはジャンル分けが可能なほど市場に溢れ、
さほど目新しいものではなくなりましたが当時の日本人のサウンドクリエイターが
商業音楽とは著しく距離を置くこのジャンルとのミックスチャーをやっていたというのが
当時凄かったんだろうなと思いますが、今では「もっと凄いこと」だったんだと実感します。
今はこういった先人達の偉業のおかげであらゆるジャンルの音楽を聴く事ができるのに
何で今の曲は皆同じに聴こえるんでしょうか?
[ポップ音楽はここ50年で「よりうるさく、単純に]

音楽の視聴ジャンルがワールドワイドになった事が逆に演る方も聴く方もちんけな
ジャパニーズ・ポップスに簡単に流れていってしまう事に苛立ちは隠せません
(良質のルーツ音楽を基にもたないコピー物が更に劣悪なコピー物を生みだす悪循環)
未だに縞梟のおっさんを満足させてくれるのが、70年代の細野晴臣の音楽っておかしいだろ・・・
表現したい音楽ではなく売れる商業音楽を煽りたて個性を抹殺しベスト盤、企画物、ダンス物を
捨てる感覚で大量流通させちゃった反動で独自性を放棄した日本の音楽市場が崩壊するのは
もはや時間の問題(苦笑)



蝶々-Sanについての細野談
「最初ね、サディスティック・ミカ・バンドってあったでしょ?そのーそれ用に、曲を頼まれたの。
ミカのイメージで、作ってみたのね。詞をね。曲が間に合わなくてさ。そんであきらめて
自分で歌うんで、ああいう風になっちゃったんだよ。ほとんど頭がおかしい世界ですよ、これ。
意味は何だっていわれたら困っちゃう(笑)」

はらいそ/細野晴臣 - 1978.04.25 Tue









[sales data]
1978年4月25日
[producer]
細野晴臣
[member]
細野晴臣(vo/b/synthe/etc)
鈴木茂(g)
徳武弘文(g)
林立夫(ds)
高橋幸宏(ds)
浜口茂外也(per)
斉藤ノブ(per)
佐藤博(p/key/synthe)
坂本龍一(p/key/synthe)
武川雅寛(vl)
大貫妙子(bvo)
ティーブ・釜萢(vo)
かまやつひろし(bvo)
川田知子(bvo)
あがた森魚(bvo)
東京シャイネス・ボーイズ(bvo)




コロンビアからアルファレコードに移籍。

ハリー細野とイエロー・マジック・バンド名義による「トロピカル3部作」第三弾。

ポルトガル語でパライーソ=楽園なんだそうで、日本では隠れキシリタン以来
「はらいそ」と言うそうです。

トロピカル・ダンディ~泰安洋行の流れを組むチャンキー・ミュージックですが
サウンド的にシンセの使用率が高まり、収録曲の「ファムファタール」で
細野&坂本&高橋の3人が初めて揃い、レコーディング終了後、
細野氏が坂本&高橋を自宅に呼び、炬燵を囲んで焼きおにぎりを食べながら
かねてより暖めていたYMO構想(「外人から見た誤解された東洋のイメージ」を
エレクトリック・ディスコ的なアレンジで表現する)を説明しそのコンセプトに
意気投合しバンド結成となるためYMOの源とされる作品です。



こう書くとYMO誕生前夜、細野さんのシナリオ通りスムーズに事が運び、
ミュージシャンとして気持ちが充実したやる気に満ちた内容と思われるかも
しれませんが、実は先にYMOの原型に近いアイディアで一番の音楽的理解者だった
林立夫&佐藤博と女性ボーカル(Mannaさん?)を入れたバンドを組んで

tin_pan_alley_yellow_magic_carnival1.jpg

アルファに移籍するつもりだったのが、ご破算になり(林立夫氏が突然辞退)
相当ショックを受けて失意の状態でのレコーディングだったようです。

細野氏談
「落ち込んで移籍したんですよ。どうしようかなあ、一人になっちゃったなあと
思って。それでとりあえず、ソロ・アルバムを作ることになるんですが・・・」

坂本氏談
「ほとんど言葉がないというか、喋らずに。顔色を伺いながら、黙々と。
何をやればいいのか、いいのか悪いのかもわからない。ディレクションがないという」



[YMOネタ]
細野氏談(1977年の回想)
「これは、本当に真面目にそう思ってたんだけど、釈迦が29歳で出家して、
30歳でなにかがわかったっていうことがすごく気になってて、30歳の時までに、
ひとつの仕事(ミュージック・ビジネス)を完成させなきゃいけないと思ったんだ。
(釈迦に負けたら人生に負けるような気がしていたの(笑)
自分の社会的なアイデンティティを確立させなきゃいけない、
いい音楽をやり続けるためにも、成功しなきゃいけないって思ったの。
初めて、そういうふうに思ったんだよ。
トロピカル・ダンディ&泰安洋行が、当時かなり違和感を持って捉えられていたため
これを商品にするにはどうしたらいいか考え、当時流行っていたディスコティックで
ダンス音楽の枠を利用して、今までのちょっとへんてこりんな世界をのっけてやれば、
すんなり伝わるんじゃないかという。
それで林立夫氏ら周りにいる人たちと、なにかをでっち上げようということで
始まったんです(この企画は頓挫)
そしてアルファ・レコード設立レセプションで記者会見があって、とっさに
「イエロー・マジック・オーケストラ」という名前を思いついたんで、
1年以内にそれをやりますと発表しちゃったんです。
「イエロー・マジック・バンド」だったかもしれない、最初は。
とにかくそれをやるんだってことだけは自分の中で決めてました。」

はらいそ最後に「この次はモアベターよ」というセリフが決意表明として
収録されています。

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