Genius of Modern Music: Volume 1/Thelonious Monk - 1947.11.21 Fri
[sales data] 1951 (Rec:1947/10/15&24,11/21) [producer] Alfred Lion [member] Thelonious Monk(p) Art Blakey(ds) Idrees Sulieman(tp) Danny Quebec West(sax) Billy Smith(sax) Gene Ramey(b) George Taitt(tp) Sahib Shihab(sax) Bob Paige(b) | Genius of Modern Music: Volume 1/ Thelonious Monk |
1950~60年代のジャズ黄金期を支え、中でもハード・バップにおいて
一強と言えるほど存在感があったのがブルーノート。
50年代に入りブルーノーはモダンジャズ路線に舵を切るのですが
この頃、ブルーノートでスカウト活動をしていたアイク・ケベックさんがアルフレッド・ライオンさんに
逸材として紹介したのがバド・パウエルさんとセロニアス・モンクさんだったようです。
そしてライオンさんが新しいプロジェクトを始めるにあたり最初に録音を決めたのは
モンクさんの型破りの演奏でした。
ライオンさん談
「リーダー録音のないセロニアスに魅力を感じた。私は有能だが知られていない
ミュージシャンの作品を作りたかった。ブルーノートが新局面を迎えるなら
ミュージシャンにも新しい時代を感じさせる人材が必要だ」
いかにライオンさんがモンクさんの才能を買っていたのかが分かるのは
低予算のマイナーレーベルは数曲録音したものをまずSP盤で発売し、セールスが良ければ
その売り上げ資金を元手に次の作品を録音するというのが一般的でしたが、驚くことに
ライオンさんはこの全く無名の異端児の録音を立て続けに3回行ってアルバムを完パケさせています。
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Genius of Modern Music: Volume2/Thelonious Monk - 1952.05.30 Fri
[sales data] 1952 (Rec:1951/7/23,1952/5/30) [producer] Alfred Lion [member] Thelonious Monk(p) Art Blakey(ds) Sahib Shihab(sax) Milt Jackson(vibraphone) Al McKibbon(b) Kenny Dorham(tp) Lou Donaldson(sax) Lucky Thompson(sax) Nelson Boyd(b) Max Roach(ds) | Genius of Modern Music: Volume2/ Thelonious Monk |
50年代モダンジャズ路線に舵を切ったブルーノートの首領、アルフレッド・ライオンさんが
売れ線度外視で世に出したセロニアス・モンクさん推し第二弾。
現在のように多様な音楽ジャンルが乱立するような混戦状態であれば頭一つ抜きに出るには
「個性」が物を言いますが、モンクさんの独特なプレイスタイルはちょっと時代的に早すぎましたね(笑)
アート・ブレイキー談
「セロニアスは斬新だった。パーカッシヴなタッチは言うに及ばず、ハーモニーは
どう考えても不協和音にしか聴こえない。それが不思議なほど自然に響く。
ただしユニーク過ぎたんで殆ど聴衆からもレコード会社からも相手にされなかった(笑)」
Thelonious Monk Trio - 1952.10.15 Wed
[sales data] 1956 (Rec:1952/10/15&12/18 1954/9/22) [producer] Bob Weinstock [member] Thelonious Monk(p) Gary Mapp(b) Art Blakey(ds) Max Roach(ds) Percy Heath(b) shaker(unknown) | Thelonious Monk Trio |
アルフレッド・ライオンさんがモンクさん推しでブルーノートで売り出したものの
あまりに自由すぎてそのユニークさが全く理解されずセールスは振るわず、
続くプレステッジ時代も生活に困窮するほど売れなかったようですが、
1956年にリバーサイドと契約し「ブリリアント・コナーズ」をリリースすると
ようやく時代がモンクさんに追いつきその個性が理解され始めブレイクの兆しが見えると、
プレステッジがその上昇気流に便乗して、1952~1954年頃の売れなかった頃の作品を
続々再プレスしたようです。
その不遇だったプレステッジ時代の1952年と1954年のトリオセッションのカップリング。
ドラムにアート・ブレイキーとマックス・ローチの二刀流含む3セッションが収録されていますが
この頃のハードバップは2菅+ピアノのクインテットが主流だったのでトリオ演奏は
珍しいかも。
有名になって出し直したところ、たちまち人気盤となるのですから、聴き手なんて
いつの時代もいい加減なものです(笑)
その意味でもライオンさんの才覚を見る目は確かだなと。
年代から考えて「ジャズ(音楽)はもっと自由でいいんだ!」と音で訴えたのは
モンクさんが初めてかも。
Monk(1956 album) - 1953.11.13 Fri
[sales data] 1956 (1953/11/13&1954/5/11) [producer] Bob Weinstock [member] Thelonious Monk(p) (1954) Ray Copeland(tp) Frank Foster(sax) Curly Russell(b) Art Blakey(ds) (1953) Julius Watkins(French horn) Sonny Rollins(sax) Percy Heath(b) Willie Jones(ds) | Monk(1956 album)/Thelonious Monk |
自身の名を冠しただけのアルバムなのでアルバムタイトルと認識させるため
便宜上「1956 album」とサブタイトルがつけられていますが、内容は1953年と1954年の
二つのクインテットのセッションを収録したもので1956とは発売された年号を表しています。
1953年のセッションにはソニー・ロリンズさんが参加していますが、多分初共演盤だと思いますが
意外とスムーズなコンビネーションだと思いませんか?
実はロリンズさんは高校時代からモンクさんの自宅に通って音楽的薫陶を受けていたということで
いわば師弟関係のため、お互いを分かりあえる演奏が展開されているのです。
このセッションは、ライナーによると、モンクとロリンズの到着が遅れ、更にインフルエンザで
レイ・コープランドさんが倒れ、代わって急遽ジュリアス・ワトキンスさんが参加するという
バタバタした状況だったようです。
モンクさんの好き嫌いの分かれるのは「ここにこの音は来ないだろう」という聴き手の想定外の
不協和音だと思うのですが、モンクさんはわざと不協和音にすることでピアノの打楽器特性を
活かしたというかリズムの刻みを強調(アクセント)しようとしていたのではないかと
つまりモンクさんはピアノをメロディ楽器ではなく色の着いた打楽器として演奏していたのでは
ないかと思います。
Thelonious Monk and Sonny Rollins - 1954.10.25 Mon
[sales data] 1956 (Rec:1953/11/13&1954/9/22&10/25) [producer] Bob Weinstock Ira Gitler [member] Thelonious Monk(p) Sonny Rollins(sax) Julius Watkins(french horn) Percy Heath(b) Tommy Potter(b) Art Taylor(ds) Art Blakey(ds) Willie Jones(ds) | Thelonious Monk and Sonny Rollins |
モンクさんのプレステッジ最終セッション。
タイトルが「モンク&ロリンズ」なので全曲共演盤かというとそうではなく
この頃のジャズレコードは一体どういう意図で録音年の異なる複数セッションを組み合わせて
アルバムにしていたのか、よく分からないものが多いのですが、本盤もロリンズさんが参加した
1953年のクインテットセッション「Monk(1956 album)」未収録の楽曲と
1954年の二つのトリオセッション(ヒース&アート・ブレイキーとトミー・ポッター&
アート・テイラーのカップリングです)
(何故モンク&ロリンズさんのセッション音源をわざわざ2枚に分けたのか不明)
冒頭2曲はスタンダードでロリンズさんのテナー演奏が光ります。
その分モンクさんは大人しいです(笑)
オリジナル曲の「13日の金曜日」はブラックサバスのような悪魔崇拝的な曲ではなく
アルバムの収録時間の穴埋め用にセッション中にスタジオで書かれ、
たまたま収録日の11月13日(金)の日付をタイトルにつけた10分間のジャムとして
演奏されたためかなりダラダラしています(笑)
Thelonious Monk Plays Duke Ellington - 1955.07.27 Wed
[sales data] 1956 (Rec:1955/7/21&27) [producer] Orrin Keepnews [member] Thelonious Monk(p) Oscar Pettiford(b) Kenny Clarke(ds) | Thelonious Monk Plays Duke Ellington |
不遇の時代を経たモンクさんのリバーサイド移籍第一弾はトリオによるデューク・エリントン作品集です。
プロデューサーのオリン・キープニュースさんは、モンクさんの晴れのリバーサイド第一弾を
どのような内容にするかかなり悩んだそうです。
プレステッジのセッションでモンクさんのスタンダード演奏は灰汁の強さが弱まる傾向だったので
ある意味リバーサイドの戦略勝ちといいましょうか、独自性の強いモンクさんのオリジリティを
あえて封印してメロディの明確なスタンダードを演奏させたことで(いつもの不協和音も少なめ)
逆にスタンダードで浮かび上がるモンクさんの特異性というものにスポットがあたり、
セールスにつながったことはキープニュースさんにしてみればしてやったりの満足感があるでしょう。
しかもモンクさんを分かりやすく紹介するために選んだ題材のデューク・エリントンについての
モンクさん談
「エリントンの曲、よく知らないんだよね」
つまりスタンダードなのにモンクさんの中ではスタンダードではなかったことも
単なるカバー演奏以上の味付けができた要因の一つだと思います。
The Unique Thelonious Monk - 1956.03.17 Sat
[sales data] 1956/8 (Rec:1956/3/17&/4/3) [producer] Orrin Keepnews [member] Thelonious Monk(p) Art Blakey(ds) Oscar Pettiford(b) | The Unique Thelonious Monk |
リバーサイド移籍後、デューク・エリントンのスタンダードカバー集が好評だったため
キープニューズさんは、第二弾もトリオ編成でのスタンダードカバー集にしてモンクさんの
知名度アップを図ります。
スタンダードナンバーなのでアルバムタイトルほどモンクさんの強個性を発揮した作品では
ありませんが、随所にその独特な演奏を楽しめます。
総じてハードバップ系のピアニストはバラード演奏が苦手な傾向ですが、モンクさんの
独特な節回しでもさらっと聴かせてしまうのが不思議です。
2枚続けてオリジナルを封印されたモンクさんの次作は思いっきりその封印を解いた
モンク魂炸裂の作品になります。
Brilliant Corners/Thelonious Monk - 1956.12.07 Fri
[sales data] 1957/4/4 (Rec:1956/9/9&12/7) [producer] Orrin Keepnews [member] Thelonious Monk(p) Ernie Henry(sax) Sonny Rollins(sax) Oscar Pettiford(b) Paul Chambers(b) Max Roach(ds) Clark Terry(tp) | Brilliant Corners/Thelonious Monk |
1956年を代表する4大ジャズセッションを締めくくる1枚。
リバーサイドの販売戦略でモンクさんの癖の強さをスタンダードカバーでオブラートに包みながら
売り出してみると、セールスがついてくるようになったのでリバーサイド第3弾にして
初めてオリジナル楽曲を収録し、一気にモンク節がスパークします!
タイトル曲は難しすぎて再演されていないらしく、一説によるとレコーディング時も
25テイクでも上手くいかず、最後はテープ編集に頼ったらしいです・・・
大西順子さんがこのアルバムをいい演奏の三原則を満たした作品と高評価しているのですが
純子さんの言ういい演奏というのは、指が早く動く超技巧という意味ではなく
(1)スイング感のあるリズム(2)音楽を完全に理解すること(3)楽器を自分のものに
していること
上記がいい演奏の三原則であり、モンクさんの演奏は全てを満たしていると大絶賛です。
ジャズというよりも現代音楽に近いのかもしれませんけど、かなりでたらめに弾いているようで、
こんなヘンテコなピアノ演奏でぐいぐい惹きこまれる作品って他にあるでしょうか?
まぁモンクさんの作品はこんなのばっかりですけど(笑)
Thelonious Himself/Thelonious Monk - 1957.04.16 Tue
[Rec data] 1957/4/5&16 [producer] Orrin Keepnews [member] Thelonious Monk(p) John Coltrane(sax) Wilbur Ware(b) | Thelonious Himself/Thelonious Monk |
1957年、悪癖のドラッグ&酒でマイルスをしくじり、2度目のバンド解雇となり
途方に暮れていたコルトレーンさんに二つの重大な出来事が起こります。
一つは「改心」
解雇のショックと自分自身への腹立ちから故郷フィラデルフィアの母親の家で
苦しみながら自力で麻薬と絶縁し(コールドターキー)中毒を克服します。
コルトレーン談
「個人的な危機に差し掛かって、やっと抜け出たところなんだ。
うまく脱することができて本当に幸運だったと思って、自分がやりたいのは
できるならば人々を幸せにできるような音楽を演奏することだと思った。
もともとそれがやりたかったんだけれど、あまりにもその途中に色々なことが
あり過ぎて、ともすると忘れてしまう。技術的なことで自分を取り囲み過ぎて
ついつい見えなくなってしまうんだ。二つは一緒に持てないんだよ。
多分、もっとそのことについてよく考えて行けば、何か方法が、進むべき道が
見つかるかもしれないけど・・・」
そしてコルトレーンさんにその進むべき道を示しその軌道に乗せる「啓示的出来事」が
セロニアス・モンクさんとの出逢いです。
モンクさんを讃えるコルトレーン談の数々
「モンクと一緒に仕事をしたことによって、僕は最高の音楽芸術を知ることができた。
モンクからは間隔面で、理論面でそしてテクニックの面でも多くのものを学んだ。
僕は音楽上の問題についてよくモンクによく尋ねたが、彼はピアノを弾いてその解答を
示してくれた。僕の演奏に完全な自由を与えてくれたのもモンクだった。
それ以前には誰もそうした自由を与えてくれなかった」
「テナーサックスで一度に二つか三つの音を出す方法を教えてくれたのはモンクだった。
それは調子外れの指使いと唇の当て方の調節で和音を出すという方法である」
「僕が一曲を長く演奏するのはモンクと一緒にやっていた頃に覚えたことなんだ。
同じ曲を延々と演奏することで、ソロに対する考え方にも新しいものが生まれてくる」
「モンクと一緒に演奏するときにはいつも奈落の底に突き落とされるようなスリルを
味わうことになるんだ」
コルトレーンさんのインタビュー記事からモンクさんに関するものを引用しようとするとキリがないのですが
モンクさんとの半年間が「音楽の自由度」を謳歌したコルトレーンさんに大きな影響を与えたことが分かります。
全曲トリオ編成の演奏なのかと思っていましたが、ラストの「Monk's Mood」のみ
トリオ演奏で他はピアノソロでした(マイルスで有名になった「Round Midnight」収録)
流暢に流れ出ないぶつ切りのピアノ演奏は癖が強く、美しさと不快な驚きを同時に
感じさせるアルバムと言われているようですが、モンクさんの名前を初めて意識したのは
クラムボンの原田郁子さんの10代の頃のアイドルがモンクさんだったと語っていたことがあり、
あぁ確かに郁子ちゃんこんな風にピアノ弾くことありますね(笑)
コルトレーンさんがこのモンクさんの型にはまらない独自の音楽表現と接し
多大なインスピレーションを受けている様を想像しながら聴くととても面白いです。
Monk's Music/Thelonious Monk - 1957.06.26 Wed
[Sales data] 1957/11 (Rec:1957/6/25-26) [producer] Orrin Keepnews [member] Thelonious Monk(p) Ray Copeland(tp) Gigi Gryce'sax) Coleman Hawkins(sax) John Coltrane(sax) Wilbur Ware(b) Art Blakey(ds) | Monk's Music/Thelonious Monk |
ジャケットからしてモンクさんのジャズ界での異端児ぶりは十分伝わってきます(笑)
ジョン・コルトレーン、ジジ・グライス、コールマン・ホーキンス、レイ・コープランドの4管に
ウィルバー・ウェア&アート・ブレイキーのリズム隊というセプテット編成のモンクさんの代表作。
「Well,You Needn't」のコルトレーンのソロの直前で、モンクさんが「コルトレーン!コルトレーン!」
と叫んでいることで有名な作品です。
流暢とはいいがたいモンクさんの独特なピアノ演奏に大きく刺激されながら、
刻々とコルトレーンさんが自我に目覚めていく過程の1枚として聴くととても興味深い音源です。
(余談)
2011年のプレス盤のボートラ「Blues For Tomorrow」にモンクさんが参加していないのは
初日のセッションが低調でモンクさんが機嫌を損ねて帰ってしまったので、
万が一アルバムの尺が足りないと困るのでプロデューサーのオリン・キープニュースさんの頼みで
残りのメンバーによって演奏されたものだそうです。